七草粥を食べる理由って?七草は、春の七草じゃなければいけないの?

2019年7月3日

七草がゆの画像です

七草粥は、もともと人日の節句の行事食

七草粥(ななくさがゆ)といえば、1月7日の朝に食べられている日本独自の料理です。

今では、七草粥はお正月で疲れた胃腸を休めるための食事として定着していますよね。でも、もともと七草粥は、人日(じんじつ)の節句の行事食としてはじまりました。

人日の節句というのは、五節句のうちのひとつにあたります。

ちなみに、五節句というのは、1年のうちに5回あり、江戸幕府が定めた式日のこと。1月7日の人日、3月3日の上巳、5月5日の端午、7月7日の七夕、9月9日の重陽の5つのことをいいます。

桃の節句の上巳や端午の節句と比べると、人日の節句というのはあまりなじみがないかもしれませんが、日本では、平安時代からつづく風習なんですよ。

 

七草粥と人日の節句の関係は、中国の前漢時代(紀元前206年~8年)までさかのぼります。人日というには、言葉のとおり、”人”の日のことです。
その時代、新年の運勢を占うために、元日から7日までの間を、それぞれ鶏の日、狗(犬)の日、猪の日、羊の日、牛の日、馬の日、人の日とし、それぞれの日には、その動物を殺さないようにしていました。

つまり7日目の人の日は、人を殺してはいけないため、犯罪者の刑罰を行わないようにしていたのです。
さらに、1日ごとにそれぞれの占うものをあげて、8日目には穀を占うことで、新年の運勢をみていました。それが人日の風習です。

 

七草粥の誕生

時代がくだり、唐の時代(618年~907年)になってからは、人日の日に7種類の野菜をいれた汁物、七種菜羹(ななしゅさいのかん)を食べて、無病息災を願う習慣ができました。

羹はあつもの、つまり汁のことをいいます。

若菜から、自然の生命力をもらうという考え方からはじまっているのです。

また、中国では、官吏の昇進は毎年1月7日に決まっていました。そのため、その日の朝に七種菜羹を食べて、立身出世を願ったという側面もあります。

 

この風習が日本へ伝わったのは奈良時代です。

新年に若菜をつみ、それを食べることで生命力を身体に取りいれる「若菜摘み」、7種類の穀物でお粥をつくる「七種粥」などの風習と結びついていき、七草粥となったようです。

その後、江戸時代に人日が五節句として定められたことで、一般認知度が高まり、定着していきました。

七草粥を食べる人日の節句は、松の内(1月1日~7日)の最後の日にあたります。この日に七草粥を食べることで、新年の無病息災を願う風習へと変化していったのです。

 

七草粥は、春の七草じゃなくてはだめ?

七草の画像です

七草粥は、お正月にごちそうをたっぷり食べて疲れ気味の胃腸を、いたわることや、青物が不足しがちな冬場の栄養を補うことができます。

このときに七草粥につかう七種類の若菜というのは、芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、繁縷ら(はこべら)、仏の座(ほとけのざ)、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)の七種類が一般的です。

スーパーや八百屋などでは、1月7日が近づくと、七種類の若菜がセットになって売り出されていますよね。

 

春の七草にはそれぞれ豊富な栄養素が含まれています。
せりは、高い抗酸化作用をもち、食欲増進効果が期待できますし、なずなは、ミネラルが豊富。特にカルシウムの含まれる量は多く、ほうれん草の5~6倍ともいわれています。

また、ごぎょうは風邪予防や解熱効果があり、はこべらは目に良いビタミンAが豊富で、かつては、腹痛の薬としても使われていました。

ほとけのざは栄養素に不明な点が多いものの、食物繊維が豊富。すずなすずしろは、カブと大根の別名になります。カブはビタミンが豊富で、大根は消化を助ける酵素が豊富で、風邪予防などに効果があるといわれています。

 

このように春の七草は栄養が豊富なため、新年の栄養補給に最適です。とはいえ、春の七草でなくても、七草粥は作ることができます。

七草粥のルーツが、七草菜羹や七種粥などからきていることからみると、七種類の野菜の中身は、特に決まっているわけではないのです。春の七草ではなくても、七種の野菜や穀物を用意できれば、七草粥になります。

 

地域によっては、積雪量が多く春の七草などの若菜がとれなかったことから、七草を使わない粥をつくる地域もあります。

例えば、東北地方では、ごぼうやにんじん、こんにゃく、油揚げやずいき(いも類の葉柄)などをいれた粥や、昆布や干し柿、栗などを入れた粥なども、七草粥として作られているのです。
粥に鶏肉をいれる七草粥を作る地域もありますし、野菜だけではなく、お餅と七種類の食物をいれて七草粥にする地域もあります。

 

このように、地域によって様々なアレンジがされているため、一口に七草粥といっても、バリエーションは豊富なようですね。

 

もしも、七草粥をご自宅で作るときに、ありあわせの葉物を入れて作ったとしても、まったく問題なし。立派な七草粥です。

新鮮な野菜や穀物を使うようにすれば、自然界から生命力をたっぷりもらえます。
七草粥を気軽に作って、新年の無病息災を願いましょう。

 

七草粥は人日の行事食・七草は新鮮な食材ならどんなものでもOK

七草粥は節句の行事食でしたが、現在では1月7日の朝に食べることで、新年の無病息災を願う正月の食事として広く知られています。

一般的には春の七草を使う七草粥が定着していますが、ありあわせの食材を七種類入れて七草粥にしても問題ありません。

自由に新鮮な野菜を使って、七草粥を楽しみましょう。