夏の季語を一覧で紹介!
季節を鮮やかに表現する季語
季語とは、俳句や連歌などで使われる季節を表す言葉のことです。
季語を織り込むことで、季節感を鮮やかに表すことができ、
俳句では、一句のなかに必ず季語を入れなくてはならないというルールがあります。
季語は、春、夏、秋、冬、そして新年の5つの季節に分けられます。
今回のテーマの「夏の季語」について考えてみると、そのなかでさらに大きく3つに分けられます。
それは「初夏」「仲夏」「晩夏」で、それぞれ旧暦の4月、5月、6月頃に当たります。
いま使われている太陽暦で言うと5月、6月、7月頃。現代の私たちが考える夏の概念よりも少し早い時期ですね。
では、俳句のなかで季語が実際にどのように使われるのか。例として一句紹介します。
『月に柄をさしたらばよき団扇かな』
これは、室町時代の俳諧人である山崎宗鑑の句です。
「月に柄をさしたら良い団扇になるだろうなぁ」というウィットに富んだ表現です。
この句の中の季語はどれかというと、「団扇(うちわ)」です。季節はもちろん夏ですね。
このように、季語を1つ入れることで、その俳句で描かれている情景の季節感を鮮やかに、グッと強調して表現することができるのです。
たくさんある夏の季語
夏の季語は書ききれないほどたくさんありますが、以下によく使われるものを一覧として紹介します。
まず、代表的なものとしては、夏の天気を表現する単語が季語となります。
例えば、「梅雨」、「五月晴」、「炎天」といった言葉です。夏の空を見上げれば、「入道雲」や「遠雷」なども季語となります。
また、夏といえば何といっても暑さですよね。
夏の暑さを表す「大暑」や「熱帯夜」、「汗」なども季語になります。
夏が過ぎていき晩夏になると「秋近し」といった表現も出てきます。
さらに、夏に身に着けるものも季語となります。例えば、「浴衣」、「短ズボン」、「海水着」など。
夏に使う道具としては、冒頭に挙げた山崎宗鑑の句でも用いられている「団扇」をはじめ、「蚊取り線香」、「日傘」、「サングラス」なども季語です。
それから、夏の娯楽といえば「海水浴」や「プール」に「花火」。現代の俳句では「ラジオ体操」も季語に含まれます。
『跳躍台人なしプール真っ青なり』
これは、大正から昭和にかけて活躍した俳人・水原秋桜子の一句です。
季語に「プール」が使われています。飛び込み競技の前の様子を歌っています。
夏に現れる動植物も季語として挙げられます。
例えば、夏の代表の花「向日葵(ヒマワリ)」。生き物では、「蚊」、「カブトムシ」、「金魚」、「蝙蝠(コウモリ)」、「蝉」。蝉の抜け殻「空蝉」も晩夏の季語です。
「空蝉」は、紫式部の源氏物語のなかで、主人公の光源氏が歌った和歌でも使われています。
『空蝉の身をかへてける木のもとになほ人がらのなつかしきかな』
光源氏がある女性に求愛して会いに行ったにもかかわらず、その女性は、愛を受け入れきれず、着ていた衣だけを残して逃げて行ってしまったという場面での一句です。
夏の季語としては、旬の食べ物もあります。
野菜なら「トマト」や「ピーマン」、そして「トウモロコシ」。海や川の幸なら「初ガツオ」や「鮎」。果物なら「西瓜(スイカ)」や「パイナップル」。飲み物では「アイスコーヒー」、「サイダー」、「麦茶」など、夏を象徴する飲食物がいっぱいです。
他にもまだまだ、「アイスクリーム」、「冷やし中華」、「ゼリー」。
だんだんお腹がすいてきますね。
季語で夏を感じましょう!
最後に、夏の季語をふんだんに使った夏の代表的な俳句を紹介します。
『目には青葉山ホトトギス初鰹』
江戸中期の俳人・山口素堂の句です。
松尾芭蕉と同門で親交があり、芭蕉の俳句のスタイル「蕉風」の確立に寄与したといわれています。
この句で詠まれているのは、「青葉」の鮮やかな緑、「ほととぎす」の美しい鳴き声、「初鰹」の美味しさ。
それぞれ、目で見たもの、耳で聞いたもの、舌で味わったものですね。短い句のなかに、初夏に感じられる視覚・聴覚・味覚をまとめて盛り込んでいます。
夏の季語を上に挙げてきましたが、これ以外にも「夏の風物詩」として私たちが思い浮かべるものの多くが季語となっています。
夏の俳句を読んだり、また自分で実際に作ってみると、魅力的な季語をたくさん学べます。
夏の季語を知ると、日常の暮らしの中で「夏」という季節を改めて実感することができ、夏をはじめとする日本の四季の素晴らしさを再発見できることでしょう。
視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の五感を総動員して、季語と共に季節感をかみしめるのもよいかもしれませんね。
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